院長ブログ
整形外科の標準治療?
インターネットの威力は強力で今も衝撃波治療を希望されていらっしゃる方が結構いらっしゃいます。やはり、疾患として多いのは足底腱膜炎、アキレス腱症、石灰沈着性腱板炎の方でした。他の医療機関の治療で治らなくて困って来院する方から最初から当院で治療を受けに来る方と患者さんの背景は様々です。それら全ての方に衝撃波治療と同時にリハビリや薬、注射の治療を行って来ました。
衝撃波治療は魔法の治療ではなく、今回まとめた治療効果の結果はそれらのいわゆる標準的な治療を行ってきた結果だと思っています。悪性腫瘍なんかと違い整形外科の疾患は命のやりとりになる事はあまりなく、いろんな医療機関がそれぞれいろんなやり方をやっているものだなと思います。
極論すれば、整形外科の関係学会でまとめた標準的な治療に衝撃波をあわせると結構上手く治療できているというのが実感です。
以下患者さん向けのパンフレットをダウンロードできるようにしました。
2019年日本運動器Shock Wave研究会学術集会に参加してきました。
昨年のこの学会で体外衝撃波治療の効果を知り、今年の三月から当院にも導入して、皆様の治療に役立てております。衝撃波には様々な効果があることが長年の基礎研究の結果から明らかになり、だんだんと導入する医療機関も増えてきているようです。最近では傷の治癒を早めたり、骨折の治療に役立てるような試みも行われているようです。
とはいえ、万能な治療でもなく当院でもその有効性をそろそろ調べて、どのような使い方がよりいいのかを追求するとともに、その治療効果の限界も明らかにして、その結果を皆さんにもお知らせできるようにするつもりです。
「古代の秘宝」
長寿で有名であった古代の部族の健康の秘密を苦労して解明したその結果が「早寝早起き・腹八分目」であったというオチでした。このショートショートを読んだ頃に自分が医師になるとは思ってもいなかったのですが、高齢化社会に突入した昨今、いかにシニア世代が健康を維持するかが喫緊の課題となっており、健康維持のための方法や食品に関する情報がテレビやネットや本屋さんに溢れかえっています。そういう情報に敏感な方は多くいらっしゃるようです。
体重のコントロールは、膝にも腰にも一番いい方法であることは科学的に証明されていますし、そのためには食事制限は必須です。何か特別なことをやるというよりはいわゆる「不摂生」を避けることが健康維持には一番いいとは思いますが、なかなかお酒も美味しいし、美味しい食事は楽しいもので、もっと簡単な方法はないかと色々な健康法に飛びつく気持ちもわかります。IT社会には色々なあやしい情報が昔以上に飛び交っており、それに右往左往する今の風潮をすでに40年前に皮肉っていた星新一は希代のストーリーメーカーであったと思います。
9月医学健康講座無事終了
いつものように日頃時間がなくてきちんと説明できない病気の説明を少し時間をいただいてじっくりと行いました。
今回は「坐骨神経痛」の話です。プレゼンテーションの内容は個人的には結構満足いくものでしたが、やはり少し難しかったかなという反省と相変わらず理学療法士の先生の運動療法の話の方が観衆の反応がよかったという印象です。話を万人にわかるようにかみ砕くと逆に話がぼやけてしまうジレンマをいつも感じます。継続は力なりですので、自身のプレゼン能力の向上のためにも来月以降も実施していきます。
7月健康講座
次回は当初「脱水の話」を9月15日(土曜日)に開催予定でしたが、少し前回の講座との関連性、連続性を重視しようと考え、「坐骨神経痛を治す」に変更します。特に当院の患者さん限定ではありませんのでご興味のある方はお気軽に参加下さい。
経口補水液の作り方
連日、熱中症での死亡が報道されていますが、家の中でも脱水症・熱中症は発症することは今ではよく知られています。熱中症の予防は、以下の三点に集約されます。
- 十分な休息をとる。
- 冷房を活用する
- 適当な水分補給をする
6月健康講座修了
最初の講座の内容は「脱水のはなし」を選びました。地球温暖化の昨今、若者にも高齢の方にも聴いてもらいたい内容でした。前回みたいにいきなり大がかりな講座にせずに、整形外科にこだわらない身近な話題をコツコツと毎月取り上げていくつもりです。いちおうの予定表は 医学講座のページに掲載しています。事前申し込み、参加料は不要です。当院の患者さん限定でもありませんのでお気軽にいらして下さい。
せっかく作ったので、9月に熱中症を中心としてもう一回似たような内容でやるつもりです。今回参加できなかった方は是非どうぞ。
ヘバーデン結節
関節リウマチが心配で受診される方も多いですが、ほとんどの場合は 「ヘバーデン結節」と呼ばれる、指の関節の老化現象(変形性関節症)です。へバーデンという人が名付けた古くからよく知られている病気です。ちなみに同様の現象が、第 2関節( PIP関節)に発生した場合は 「ブシャール結節」といわれ、これも人名のつく病気です。余談ですが、人名のつく病気が整形外科には結構ありますが、みな古くから知られている病気というくらいのとらえ方で結構です。(ドケルバン病、オスグット病、ペルテス病、コーレス骨折...キリがないです。)
もちろんレントゲンの検査や必要があれば採血検査も実施して、まずは診断をつけます。残念ながらヘバーデン結節の場合、指の変形は元には戻りません。ただし、関節も固くなり、変形は残るにせよ、ずっと痛みが続くということはまずありません。
日本整形外科学会のホームページにステロイドを打ったり、関節を固定する手術をやったり色々な治療方法が出ていますが、基本的にはあまり冷やさないように関節を温めたり、テーピングの固定を痛い時期に行えば上手く痛みが強い時期はやり過ごせるものです。人の肌に貼っていいような市販のテーピングテープを幅 1センチくらいに切って巻いてみることおすすめしています。巻き方の指導や 専用のテープの販売もやっていますので、お気軽に相談下さい。
だいたい3センチくらいの幅のものが売っています。長さは指を二周するくらいの長さに切ります。
半分くらいに切ります。
こんな感じ
あまりきつくまくと痛くなります
横から見たところ
テープ二本使うほうが、きちんと巻けると思います。
肩が固くなる前に
拘縮(こうしゅく)という言葉は関節が本来の動く範囲まで動かない状態を差します。骨折とか老化現象で拘縮がすすむことはいかんともし難いところはありますが、不思議なことに肩や股関節などは特に原因のないままに拘縮がすすむことがあります。肩の拘縮に関しては「五十肩」とか「四十肩」とかいう名前でポピュラーな病気として認知されています。
肩の究極の目的は、肘と連動して「手」を目的の位置に運ぶことですが、身体をねじることでかなり肩の動きを補うことが出来るので、痛みが出たり、とことん肩が動かなくなるまで生活の支障はありません。
つまり、病院に肩のことで相談に来るかたは相当に拘縮がすすんでいることが常で、理学療法士と伴に治療を始めても肩の動きがよくなるまでには時間がかかることが多いですし、元に戻らないこともあります。
出来れば肩の調子が悪いと思っている方は、以下の方法で肩本来の動きが左右でどの程度違いが出ているか確認して、とことん悪くする前に肩のリハビリを始めていただきたいと常に思っています。
EBMと現実
今やITの技術も相まって膨大な知見が日々収集されており、それぞれの治療の優劣が明らかになっていっております。
ところが、きちんとした医学的な根拠を積み重ねるのはかなり大変で、まずきちんとした病気の診断をつけてないことには、治療が効果があったかを確認することが出来ません。相当数の患者さんに対する治療効果をみていかないと、本当に効果に差があるかどうかを検証することも出来ません。
したがって、ITの発達で色々な知識が巷に氾濫する今も臨床の最前線の私たちのような小さな診療所は、コツコツとまずは患者さんの体調の変化を見ながら、正しい診断、正しい治療を模索しなければ行けません。
代替医療について
よく患者さんにもサプリを飲んでもいいかと質問されますが、サプリといっても色々な種類があるようで返事に困ることが多いです。いつもしている返事は、「国が販売を認めているものだから健康を害する成分は入っていないと思うので、のんでもかまわないが効果に関しては保証できない」といったものです。あまり冷たいこともいいたくないですが、あくまで自己責任での服用をお願いしています。
また、鍼灸、マッサージ、カイロプラクティック、整体などの施術に関しては、日本に長年根付いているものだから一定の効果はあるのかもしれませんが、あちらの言い分と医療機関の治療の仕方が違うことでの患者さんが混乱することを避けたいので、私はおすすめはしていません。
ダイアナと私
別にそっくりさんではありません。本物のダイアナ妃です。私が今の成育医療センター(当時国立小児病院)に勤務していた時期に、国際赤十字社の総裁として、ダイアナ妃が訪日され整形外科病棟にいらっしゃいました。
受け入れ側の思惑としては、患児と妃殿下のふれあいをマスコミのためにセッティングしてあげようと言う段取りであったらしく、たくさんのカメラが押し寄せていて、その日のお昼のワイドショーも軒並みこの中継でいっぱいだったそうです。
数日前からダイアナが来る!それもこの病棟に!!との噂が半信半疑のまま整形外科病棟に流れており、それでも信じられないままに、昼過ぎにとりあえず病棟入り口でスタッフ一同でご来駕をお待ちしておりました。最初に現れたのはSPの皆様で、わらわらと病棟内に散っていってしまいました。バカな私は「すいません、SPってSecret Policeの略ですか?」なぞと質問すると、「Security Police」とのお返事をいただき、一つ利口になったことを覚えています。そんなことをやっている内に、エレベーターから長身のダイアナ妃が、日産社長を筆頭に多数のお連れの皆様と一緒にずんずんこっちにやってくるのが見えて、オーという間に「Nice to meet you, Mamm」なぞといいつつ、固い握手を交わしてしまいました。いい服をお召しでした。
当初の段取りでは、病棟の遊技施設エリアにモニターを設置して、病院の外に出られない患児のために開発された当時はやりのインターラクティブなソフトのデモをご覧に入れ、ちょっと患児を抱いていただいて、フォトセッションをやってハイ終わりみたいな風になっていたらしいのですが、ソフトのデモを見るのに必要な偏光レンズの入ったメガネを誰も妃殿下に渡そうとしないまま、粛々と段取りが進んで行きました。そのときにこんな状況をほっとけない、呪われた目立ちがり屋の九州人の血が突然活性化してしまい、突然一歩前に出て妃に向かって「Please wear this glasses 」といってメガネを渡してしまって、さらに不幸なことにそれが通じてしまったのが運の尽きでありました。
さすが世界に冠たる英国王室に属するダイアナ妃は、当初の段取りなんかは意に介さないようで、その後は当然のごとく慰問のためにすべての病室・患児のベットをいきなりまわりはじめられました。そして、これも当然のごとく一番そばにいた整形スタッフの私が、大日本帝国仕込みのインチキ英語を駆使して彼女につき合う羽目になりました。後で報道を見てみると私が彼女にぴったりくっつきすぎて、病室訪問のところはあまりいい絵にならなかったようですが、こっちも遠い国からわざわざきていただいたのみならず、すべての患者に笑顔を送ろうとされている姿に感銘を受けて一生懸命英語に近い言葉で患児の説明をすべく彼女ににじり寄って行っていたようです。
この2年後の春に彼女はフランスで客死することになりますが、私が最初に英会話を交わしたイギリス人は紛れもなくプリンセス・ダイアナであります。