ヘバーデン結節

 40歳代を過ぎたくらいの特に女性の方で、指先の一番先の関節( DIP関節・第 1関節は俗称)が腫れて痛みが出たり動かなくなったりしてきて、当院に受診される方は結構いらっしゃいます。

 関節リウマチが心配で受診される方も多いですが、ほとんどの場合は 「ヘバーデン結節」と呼ばれる、指の関節の老化現象(変形性関節症)です。へバーデンという人が名付けた古くからよく知られている病気です。ちなみに同様の現象が、第 2関節( PIP関節)に発生した場合は 「ブシャール結節」といわれ、これも人名のつく病気です。余談ですが、人名のつく病気が整形外科には結構ありますが、みな古くから知られている病気というくらいのとらえ方で結構です。(ドケルバン病、オスグット病、ペルテス病、コーレス骨折...キリがないです。)
 もちろんレントゲンの検査や必要があれば採血検査も実施して、まずは診断をつけます。残念ながらヘバーデン結節の場合、指の変形は元には戻りません。ただし、関節も固くなり、変形は残るにせよ、ずっと痛みが続くということはまずありません。
  日本整形外科学会のホームページにステロイドを打ったり、関節を固定する手術をやったり色々な治療方法が出ていますが、基本的にはあまり冷やさないように関節を温めたり、テーピングの固定を痛い時期に行えば上手く痛みが強い時期はやり過ごせるものです。人の肌に貼っていいような市販のテーピングテープを幅 1センチくらいに切って巻いてみることおすすめしています。巻き方の指導や 専用のテープの販売もやっていますので、お気軽に相談下さい。

だいたい3センチくらいの幅のものが売っています。長さは指を二周するくらいの長さに切ります。

半分くらいに切ります。

こんな感じ

あまりきつくまくと痛くなります

横から見たところ

テープ二本使うほうが、きちんと巻けると思います。

肩が固くなる前に

 拘縮(こうしゅく)という言葉は関節が本来の動く範囲まで動かない状態を差します。骨折とか老化現象で拘縮がすすむことはいかんともし難いところはありますが、不思議なことに肩や股関節などは特に原因のないままに拘縮がすすむことがあります。肩の拘縮に関しては「五十肩」とか「四十肩」とかいう名前でポピュラーな病気として認知されています。
 肩の究極の目的は、肘と連動して「手」を目的の位置に運ぶことですが、身体をねじることでかなり肩の動きを補うことが出来るので、痛みが出たり、とことん肩が動かなくなるまで生活の支障はありません。
 つまり、病院に肩のことで相談に来るかたは相当に拘縮がすすんでいることが常で、理学療法士と伴に治療を始めても肩の動きがよくなるまでには時間がかかることが多いですし、元に戻らないこともあります。
 出来れば肩の調子が悪いと思っている方は、以下の方法で肩本来の動きが左右でどの程度違いが出ているか確認して、とことん悪くする前に肩のリハビリを始めていただきたいと常に思っています。

 
 肩の動きを確認するときの鉄則は、『体幹の動きを押さえるために背中を壁や床につける』ことと『右左で比較する』ことです。上の図は、挙上方向の確認ですが、背中を壁につけて手の甲が壁にくっつくくらいまで本来動くものです。床に寝た状態でも同様の確認が出来ます。
 肩を上に上げる動作は確認しやすいのですが、最初に固くなるのは、肘が肩と同じ高さに持ち上げた状態(水平位)での内外転の動きです。下の図は水平内転方向の肩の動きの確認ですが、目安は顎と腕の位置関係です。固くなると顎が腕に届かなくなります。
 
 ところが顎を突き出せば腕に顎はいくらでも届くものです。そこで次に確認して欲しいのは、下の図のように手がどこまで反対側の肩の裏側に届くかどうかです。固くなると下の右の図のように肩甲骨をしっかり触れなくなります。
 
 さらにわかりにくいのが、水平外転位の拘縮の確認です。この方向が固くなると、頭の後ろを洗髪できない、つり革を持っていると痛くなる、ジャケットを着たりリュックを背負うときに痛いなどの症状が出てきます。そしてこの方向が固いと本当に治すのが大変です。
 
 壁に背中をつけるか床に寝た状態で、肘が十分に後ろに引けるかどうか、さらに手の甲も床や壁につくかどうか確認してください。わきを締めると簡単にできますので、わきを直角にして確認することが重要です。
 このサイトに行き着いている方はすでに肩のことで困っている方だと思いますが、是非日頃から肩が固くなっていないかを確認していただき、とことん悪くする前に受診していただきたいと思っています。

EBMと現実

 EBMはevidence based medicineの略で日本語でいうと「根拠に基づく医療」ということです。各々の医師が経験に基づいて医療を行うので はなく、最良の治療を行うために、治療効果をより厳密な科学的な方法で調べて本当に効果のあるものを選んでいこうという考え方です。
 今やITの技術も相まって膨大な知見が日々収集されており、それぞれの治療の優劣が明らかになっていっております。
 ところが、きちんとした医学的な根拠を積み重ねるのはかなり大変で、まずきちんとした病気の診断をつけてないことには、治療が効果があったかを確認することが出来ません。相当数の患者さんに対する治療効果をみていかないと、本当に効果に差があるかどうかを検証することも出来ません。
 不調を感じて患者さんは病院にいらっしゃるのですが、自分の症状を正確に伝えるためには、伝える方も訊く方も結構努力が必要です。昔私の作った資料( ここをクリック)にあるように、80%近い腰痛は原因不明です。
 したがって、ITの発達で色々な知識が巷に氾濫する今も臨床の最前線の私たちのような小さな診療所は、コツコツとまずは患者さんの体調の変化を見ながら、正しい診断、正しい治療を模索しなければ行けません。


代替医療について

  代替医療というのは、医療機関で行うような医療に変わる医療という意味で使われることが多く、日本の場合は、整体、鍼灸、カイロプラクティックなど様々です。テレビやネットで宣伝かまびすしいサプリメントもその一つと考えていいと思います。
 よく患者さんにもサプリを飲んでもいいかと質問されますが、サプリといっても色々な種類があるようで返事に困ることが多いです。いつもしている返事は、「国が販売を認めているものだから健康を害する成分は入っていないと思うので、のんでもかまわないが効果に関しては保証できない」といったものです。あまり冷たいこともいいたくないですが、あくまで自己責任での服用をお願いしています。
 また、鍼灸、マッサージ、カイロプラクティック、整体などの施術に関しては、日本に長年根付いているものだから一定の効果はあるのかもしれませんが、あちらの言い分と医療機関の治療の仕方が違うことでの患者さんが混乱することを避けたいので、私はおすすめはしていません。


ダイアナと私

 別にそっくりさんではありません。本物のダイアナ妃です。私が今の成育医療センター(当時国立小児病院)に勤務していた時期に、国際赤十字社の総裁として、ダイアナ妃が訪日され整形外科病棟にいらっしゃいました。
 受け入れ側の思惑としては、患児と妃殿下のふれあいをマスコミのためにセッティングしてあげようと言う段取りであったらしく、たくさんのカメラが押し寄せていて、その日のお昼のワイドショーも軒並みこの中継でいっぱいだったそうです。
 数日前からダイアナが来る!それもこの病棟に!!との噂が半信半疑のまま整形外科病棟に流れており、それでも信じられないままに、昼過ぎにとりあえず病棟入り口でスタッフ一同でご来駕をお待ちしておりました。最初に現れたのはSPの皆様で、わらわらと病棟内に散っていってしまいました。バカな私は「すいません、SPってSecret Policeの略ですか?」なぞと質問すると、「Security Police」とのお返事をいただき、一つ利口になったことを覚えています。そんなことをやっている内に、エレベーターから長身のダイアナ妃が、日産社長を筆頭に多数のお連れの皆様と一緒にずんずんこっちにやってくるのが見えて、オーという間に「Nice to meet you, Mamm」なぞといいつつ、固い握手を交わしてしまいました。いい服をお召しでした。
 当初の段取りでは、病棟の遊技施設エリアにモニターを設置して、病院の外に出られない患児のために開発された当時はやりのインターラクティブなソフトのデモをご覧に入れ、ちょっと患児を抱いていただいて、フォトセッションをやってハイ終わりみたいな風になっていたらしいのですが、ソフトのデモを見るのに必要な偏光レンズの入ったメガネを誰も妃殿下に渡そうとしないまま、粛々と段取りが進んで行きました。そのときにこんな状況をほっとけない、呪われた目立ちがり屋の九州人の血が突然活性化してしまい、突然一歩前に出て妃に向かって「Please wear this glasses 」といってメガネを渡してしまって、さらに不幸なことにそれが通じてしまったのが運の尽きでありました。
 さすが世界に冠たる英国王室に属するダイアナ妃は、当初の段取りなんかは意に介さないようで、その後は当然のごとく慰問のためにすべての病室・患児のベットをいきなりまわりはじめられました。そして、これも当然のごとく一番そばにいた整形スタッフの私が、大日本帝国仕込みのインチキ英語を駆使して彼女につき合う羽目になりました。後で報道を見てみると私が彼女にぴったりくっつきすぎて、病室訪問のところはあまりいい絵にならなかったようですが、こっちも遠い国からわざわざきていただいたのみならず、すべての患者に笑顔を送ろうとされている姿に感銘を受けて一生懸命英語に近い言葉で患児の説明をすべく彼女ににじり寄って行っていたようです。
 この2年後の春に彼女はフランスで客死することになりますが、私が最初に英会話を交わしたイギリス人は紛れもなくプリンセス・ダイアナであります。